聖駿学園物語 新年明けましたので特別企画
〜仁義なき戦い ♪お正月を写そう!〜

 

『あれは、私にとって柳家に仕えるようになってはじめての新年でした。まさかあんなことが毎年行われているとは夢にも思っていませんでした。……夢であってほしかった…』

――柳家使用人日記:記入者A君――

 

「「「明けましておめでとうございます」」」
屋敷の大広間で、璃奈様と浩君とそして柳母が新年の挨拶をする。テーブルにはおせち料理やおしるこ、鯛の生け作りなどがところ狭しと並べられている。
「さぁ、二人ともいただきましょう」
「…お母様」
「なぁに?りなちゃん」
「…昨晩お父様とお話をしたのですが、お父様がお母様にお預けになった私たちへのお年玉はどういたしましたか?」
「………………………………………………えっ?なななななななななな何のことかしら?」
「お母様、今の間は何ですか?それにどもり過ぎですし声も裏返ってます」
柳母は璃奈様の質問に視線をかなり泳がせ、冷や汗をダラ×2流し、裏声全開で答えた。
「璃奈ちゃん、耳ざと〜い」
「浩君はちょっと黙ってなさい。あなたは無事にお年玉をゲットしたんでしょう」
「うん、お母さんからもらったよ」
「…。…お母様、前はバックが欲しかったからでしたね。その前はイヤリング、その前は指輪。今年は何ですか?」
「よ、よ、よく覚えているわねぇ〜!ででででもっ!今年は駄目よ、絶対必要なんだから!!コートを買うためにどうしてもいるの!」
拳を握り締め、力説する柳母。
  しかし、その言葉が璃奈様に届くことはなかった。
「お母様、コートなら一月半前に買ったはずですが」
「りなちゃん、物覚え良すぎ」
「何か言いましたか、お母様」
この後も璃奈様は口でどん×2柳母を追い詰めていく。
(こ、このままじゃ、りなちゃんに丸め込まれてしまうわ。こうなったら…)
柳母は決意を胸に立ち上がり、正面に座っていた浩君を抱き上げ…。
「逃げるが勝ち☆」
逃走した。
「………………………………………………はっ!!
イチーーーーーーー!!
いきなりの柳母の行動に意表をつかれ、反応が遅れてしまった璃奈様。
 自分が呼べば1秒でどこからともなく現れることができる婚約者を
召喚した。
「呼んだかい!?愛しのマイハニー!!」
「お母様が私のお年玉と浩君を持って逃走した。追うぞ!!」
「OK!!山崎財閥の誇りにかけて、今年も勝利をおさめてみせるさ!」
「イチ。何がしかけてあるかわからんから、これを持て」
璃奈様が渡したのは改造エアガン。ついでに小型手榴弾も2、3個。
「璃奈…俺のためを思って愛の証(?)をくれるなんて!今ものすごく感動しているよっ!!」
ポチッ。
「あ」
イチ様が抱きつこうとした瞬間、足元にカモフラージュされていたスイッチを踏んでしまう。すると、奈落の底よろしくどこまでも続く落とし穴にイチ様は落ちていった。
「ハァァァァーーーーニィーーーッッッ!!!」
エコーのかかった声を聞きながら、璃奈様は落とし穴を覗き込む。そして。
「……また喚べばいいか」
冷ややかに言い残し、お年玉探しに向かっていった。

 

「こんなこともあろうかと、今年はお母様と浩君に発信機をつけておいてよかった」
璃奈様の手の中には、柳母と浩君の位置を示す機械がある。それに従って璃奈様は二人を追い詰める。
 もちろん、途中で柳母が仕掛けたトラップを解除するのも忘れない。いくつかのトラップは解除に失敗したが、廊下にある芸術品はどこからともなく現れた使用人達が守ってくれた。そういうことで、万事OKで事が進んでいる。
 使用人達が「キャー!!●百万円の壷がーっ!!」とか「わぁー!!★千万の絵画がーっ!!」とか言っていたが、璃奈様は特に気にせずどんどん進んでいった。
 発信機は二人が屋上にいることを示していた。慎重に進み、扉を勢いよく開けると。
「あっ、璃奈ちゃん早かったね!」
「浩君!!?
そこには浩君しかいなかった。腕の中には本が二冊。
「見て見て〜!お母さんからもらったんだ!ずっと欲しかったんだぁ!!
「……『世界極秘機関サーバーへの入り方』!?『初心者魔術入門』!!?浩君、お母様はどこへ行ったのっ!?
「お母さんなら別のところに行ったよ。僕はここで璃奈ちゃん達をおびき寄せて時間稼ぎしてるの!」
「くそ、ぬかった!こうなったらもう一度アイツを召喚するか…。
イチーーーーーーーー!!
「呼んだかい?愛しのマイハニー!」
璃奈様がまた自分の婚約者を呼ぶと、今度は彼は空から降ってきた。
 
気分は『は○ときどきぶ○』かもしれない。
 
もちろんイチ様は空から降ってきたことなどものともせずに『シュタッ』という効果音が似合うほど綺麗に着地を決めた。「やぁ璃奈、会いたかったよ!たった数十分でも璃奈がいなければ悠久の時の流れのようだったよっ!」
「ごたくはいい。お母様を見つけ出したい、何かいいものはないか?」
「まっかせてハニー!♪チャチャチャッ、チャッチャチャ〜!!
どこ行くの()ドア』ー!!
イチ様が指を鳴らすと、黒子達がせっせと一枚のドアを運んでくる。
「…?これは何だ?」
「これは山崎財閥技術班が総力を上げて造り出したものさ☆10分の1の確率で好きなところへ行ける優れものさ!!
「10分の1なのか?」
「そう!そこが難点なのさ!でも大丈夫!100万回実験をしたが、命の危険や身の危険のあるところへ行くことはないから!」
「念のため、ドアはお前が開けろ」
OKマイハニー!それじゃあ、お義母様のところへレッツゴー!」
ガチャ。
「「…………」」
ドアを開けると、目の前にはコタツで昼寝をしている亮君と北パパ&カルピス(生後3ヶ月)の姿が…。
「イチ、どうするんだ」
「ん〜、とりあえずミカンでも食べようじゃないか!」
マイペースなイチ様に呆れつつも、ちゃっかりお茶を淹れる璃奈様。
「あら?…………亮のお友達かしら?」
(ちっ、母親がいたのか)初めまして。私は聖(中略)年長梅組で生徒会長の柳璃奈と申します。こちらは婚約者の山崎一太郎です。実はかくかくじかじかという理由で母を探しているのですが、こちらのお宅に迷い込んでしまったので休憩させていただいてます」
「あらそうなの?大変ねぇ」
「えぇ。それでは時間がないのでこれで失礼させていただきます。行くぞイチ!」
OK!マイハニー!」
越前母は『どこ行くの()ドア』から帰っていく二人を笑顔で見送った。
「…んっ……みさぁ……」
そんなことはつゆ知らず、亮君はすやすやと眠り続けたのであった。


「全く、とんだ目に遭ったじゃないか」
「ゴメンよハニー!今度こそ引き当てるさ!!
「待て、今度は私が開ける」
ガチャ。
「うちの庭だな」
「ここにお義母様が……………………璃奈」
「何だ?」
「アレ、何だと思う?」
「ん?」
璃奈様がイチ様に言われた方向を見ると、そこには頭に木の枝をつけ、手に枝を持ち、木の着ぐるみ()を着た柳母がいた。
「イチ、捕獲しろ」
OK!マイハニー!」
またもや黒子達が現れ、イチ様に特大虫取り網を渡す。イチ様は大きく振りかぶって
「そーれっ!!
ボスッ!!
 柳母を簡単に捕らえた。
「璃奈ちゃ〜ん!お願いだからここから出して〜!!
「嫌です」
「そんなぁ〜!!なんでも言うこと聞くから〜!」
「なら、お年玉を返してください」
「そ、それは駄目〜!」
「今、なんでも言うことを聞くと言ったのはお母様です。さぁ、返してください」
「ぜぇ〜ったいに駄目!!
「お母様、いい加減にしてください。お父様に言いつけますよ」
「うぅ…。だってだってぇ〜!」
「だって何ですか」
「……璃奈ちゃんとイチ君に誕生日プレゼントでおそろいの可愛いコートを買ってあげようと思ったんだけど、消費税分の10万円が足りなかったのぉ〜〜〜!!
「お母様」
「なぁに?
「それでは本末転倒です」
………………………………………………………………………………………………えへv

おわり






おまけ

「わかりました。そこまで言うのならこの10万円お貸ししましょう。イチ、証拠写真を撮る用意を!」
OK!マイハニー!」
またもやどこからともなく現れた黒子達の手によって、写真を撮る準備がされていく。
「それじゃ、いきまーす!ハイ、ポーズ!」
カシャ。
『♪お正月を写そう』

『今年も正月恒例行事が行われましたが、昨年よりはいくぶん落ち着いていました。ただ一つ気になることは…璃奈様のお年玉は二度と戻ってこないだろうということです。そのことが発端で、恒例行事が年二回にならないことを祈るばかりです。』

 ――柳家使用人日記:記入者B君――

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