『聖駿学園物語』番外編・特別企画

〜Happy×2☆Day!!〜(前半) 

『駆け上る 待ち合わせの ホームまで急いでる 

バッグから 鳴りっぱなしの 着メロが急かしてる』 


「(遅刻だーーー!!)」 
 越前亮(4歳)は、只今待ち合わせ場所に向かって全速力で走っていた。 
 因みに只今の時間は10時ジャスト。 
 待ち合わせ時間ちょうどだが、彼が待ち合わせ場所まで到着するまで早くても15分ほどかかりそうだ。 
 彼がなぜ遅刻してしまったのかというと、寝坊、ではなく。 
 早起きな彼の父親に無理矢理起こされて、テニスをさせられていたからである。 
 負けず嫌いな彼は、父親の口車に乗せられて、母が呼びに来る9時半頃までずっと打ち合っていた、という訳なのである。 
「(絶対後5分でついてやる!!)」 
 何故なら。 
 絶対に(将来の)小舅がねちねちねちねち嫌みを言ってくるからである。 
 妹馬鹿な兄のいる彼(予定)を持つと苦労するモノである。 

「遅いな、また遅刻か」 
「しょーがないな、亮君」 
「パーティーには少し遅れそうだね」 
 只今10時5分。 
 絶対後5分で着いてやると言っていた亮君はまだ到着していなかった。 
 今待ち合わせ場所にいるのは、てるてる・浩太郎・璃奈・一太郎の4人である。 
 道案内役のつっちーはというと。 
 じつは彼も遅刻していた。 
 遅刻というか、パーティー会場作りに手間取っていて少し遅れる、とのことである。 

「まぁ、どのみちつっちーが来なきゃ向こうには行けないわけだし、ゆっくり来てもいいって連絡しとこうか」 
 てるてるは自分の鞄から携帯を取り出し、亮君の番号にかける。 
 だが、呼び出し音が続くだけで一向に出る気配がない。 
「どうやら、走るので精一杯で電話に出る暇がないみたい」 
 つっちーの嫌みを回避したい彼ならばあり得ないことではないだろう。 

〜♪ 
「(あ〜、もう!!わかってるっての!!さっさと来い、だろ!もうすぐ着くから黙ってろ!!)」 

 事実、亮君は全速力で待ち合わせのホームにむかって走ることしか頭になかった。 
 亮君が今いるのは待ち合わせの駅の改札口。 
 ちょうど今、切符を改札口に通したところだ。 
 あと1分もあれば到着するだろう。 


『笑い声 聞こえてきて いつもの顔が見える 


駆け寄って 肩を抱く 今がきっとHappy×2☆Day!!』 


「(いた!)」 
 ホームへの階段を上っていると、待ち合わせのメンバーの笑い声が聞こえてきた。 
 そして、登り切った先にはいつもの(?)メンバー。 
「お待たせ!」 
 まだ自分が来たことに気づいていないメンバーに声をかけ、一番近くにいた浩太郎の肩に手をついて息を整える。 
『遅い!!』 
 亮君が来たことに気づいた瞬間、全員が同時に声を上げた。 
「なぁ〜んて。実を言うとつっちーが準備に手間取っててまだ来てないんだよね。そんなに頑張って走ってこなくてよかったのに」 
 てるてるの言葉を聞いた瞬間、亮君は息をするのも忘れて固まった。 
 どうやら気合いを入れて頑張って走ってきた分、その行動に意味がなかったことにショックを受けたようだ。 
「それを教えようとしたのに電話に出ない亮君がいけないんじゃん。自業自得だよ」 
 浩太郎の言葉がトドメとなり、亮君は真っ白に燃え尽きた。

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